最近、YouTubeやX、Facebookなどでマッチ棒パズルを出題している方が多くなってきました。
(パズル界隈では、「田守さんがマッチ棒パズルをYouTubeで出題し始めてから増えてきたので、田守さんがブームの火付け役ですね」なんて言われてるみたいですが)
ここではマッチ棒パズルのルールと言っても、あなたが知っている解き手のためのルールではなく、
マッチ棒パズルを作るとき、出題するときのルール、注意点・誤解されている点についてお伝えいたします。
使用する数字のパターン
一般的に使われてる数字の表記は、(A)~(C)の3種類あります。
それぞれの違いは、
(A)の7は4本から形成されているのに対し、(B)の7は3本から形成されています。
左上のタテ1本が無い形ですね。
また、(C)の6と9は(A)や(B)と見比べていただくと分かる通り、ヨコ1本無い形をしています。
日本のマッチ棒パズルでは、(A)または(B)が使われることが多いですが、(C)が使われることもまれにあります。
ただ、マッチ棒パズルを出題するときに、(A)(B)(C)どのパターンの数字を使うかを前もって示しておかないと複数の答えが発生する恐れがあるのですが、お分かりになりますか?
例えば、こちらの問題。
問題.マッチ棒1本だけ動かして等式にしてください。
≠は使いません。
もしこの問題が(A)の数字のパターンを使って作成されたとすると、出題者が意図する答えは、
13-6 = 7 になります。
ただ、問題文中で(A)のパターンを使うことを明記していないため、1本少ない6、7、9を使った
15-8 = 7
15-6 = 9
という答えも正解になってしまいます。
ですので、
本来、マッチ棒パズルの出題をするときは、(A)~(C)のどのパターンの数字を使うかを明示しないといけないわけです。
ただ、私が仕事やYouTubeで出題するときは、どのパターンの数字を使うかの明示はしていません。
その代わりに、(A)~(C)のどのパターンで考えても答えが1つしか出ないように問題を作っているわけです。
これは、プロで活動しているパズル作家さんは当たり前にしていることで、出題経験のない方が見落としがちになる初歩の部分でもあります。
中には、複数の答えを出にくくするために、あえて本数が最も少ない(C)のパターンで問題を作るパズル作家さんもいらっしゃいます。
ただ、1本少ない 6 や 9 の表記は日本人の多くは見慣れていないので、(C)のパターンを使って問題を作っても受け入れられない恐れがあります。
「受け入れられない恐れがある」というのは、
「”解いてみたい”という気持ちが起きにくくなる」
「商業的な利用をしたときは、雑誌の売り上げや記事のPV数のアップに繋がりにくくなる」
という意味です。
そのため日本人向けの出題の場合は、(A)または(B)のパターンの使用をオススメいたします。
(海外の方向けの出題では、また異なります。)
ですので、
●(A)または(B)のパターンを使い、出題時には数字のパターンを明示する。
●(パターンを明示しない)スッキリした出題にしたい場合は、(A)~(C)どのパターンで考えても答えが1つしかないように問題を作る。
のどちらかのスタイルで出題するのがベストな方法です。
使用する記号のパターン
四則演算の記号の表記は、
(D)(E)の2パターンがあります。
違いは、割り算の記号が「÷」のときと「/」のときですね。
特定の視聴者・読者向けの出題で(E)のパターンが使われることがたまにありますが、
日本国内で、より多くの視聴者・読者を対象に出題するのであれば、小学生でもなじみのある(D)のパターンを使うことをオススメいたします。
ただ、(D)のパターンを使う際に注意しなければいけないのは、
問題文で「使用する記号は、+、-、×、÷ の4つだけです」と明記していないと、複数の答えが出る恐れがあります。
例えば、このような問題。
問題.マッチ棒1本だけ動かして等式にしてください。
≠は使いません。
出題者が(D)「+、-、×、÷」のパターンを使って作成していたとすると意図する答えは、
5×3 = 9+6(=15) になります。
ただ、問題文中で(D)の記号のパターンを使うことを明記していないため、
6/3 = 8-6(=2) も正解になってしまうわけです。
ですので、前にお伝えした数字のパターン同様、
●出題時には、使用する記号のパターンを明示する。
●(パターンを明示しない)スッキリした出題にしたい場合は、(D)(E)どちらのパターンで考えても答えが1つしかないように問題を作る。
のどちらかのスタイルで出題する必要があります。
絶対に使ってはいけないNGな動かし方
それは、スキマを強制的にあける行為です。
上のように、
1と6のスキマに8の中央のヨコ棒を持ってきて 5+1-6 = 0 とする行為はOKという認識で広まっていますが、これは意図解(出題者が用意する答え)に絶対してはいけません。
1と6の間にマッチ棒1本入るスキマが始めから空いていれば大丈夫ですが、
スキマが無いのであれば、「5+1」を形作っているマッチ棒(9本)、または、「6=8」を形作っているマッチ棒(15本)を動かしてスキマを作る必要があり、問題文の「1本動かして等式に…」の指示と矛盾しているからです。
問題式の回転について
そもそも問題文で「式を回転させて見ないこと」や「そのままの向きで考えてください」と明記していれば、問題は起こりません。
ただ、それを怠った場合は、下のようなことが起こります。
問題.マッチ棒1本だけ動かして等式にしてください。
≠は使いません。
この問題の出題者が意図する答えは、
そのままの向きで考えたときの 8-5 =3 になります。
ただ、問題文で「式を回転させて見ないこと」という一文をつけ忘れているため、式を逆さに見て1本動かした
6 = 9 - 3
という等式でも正しい答えになってしまいます。
ですので、
●出題時には、「式を回転させて見ないこと」や「そのままの向きで考えてください」という一文を明記する。
●(明記しない)スッキリした出題にしたい場合は、回転させて見ても答えが1つしかないように問題を作る。
のどちらかのスタイルで問題を作ります。
クイズ番組ではOKでも、出題場所を見誤るとクレームの可能性
以前、クイズバラエティ番組で下のようなタイプの問題が出題されました。
両方とも1本動かして等式を作る問題です。
意図解は、「3 6=4×9」(数字の離れた「3 6」を三十六と読ませる)です。
意図解は、「00+2=10-8」(「00」を0と認識させる)です。
これらを「ひらめき」という言葉で強引に片付けていいのはクイズバラエティ番組くらいで、
司会者と解答者が「これが答えです!」「それはおかしいですよ!」と言い合って、番組自体を盛り上げ、そのやりとりを視聴者が楽しむシチュエーションで出題するから効果がある問題です。
つまり、問題の真意を理解せず、「テレビで放送されているからOKなんだ」という思い込みのまま、それを意図解として商業的な利用をしていると、「計算式として不自然すぎる」という当たり前なクレームが来ます(現に多数ご相談をお受けしています)のでご注意ください。
今回の内容はマッチ棒パズルを作成、出題するうえで知っておいていただきたい最低限の部分で、すべてではありません。
ちなみに、数字や記号の表記について細かく言い出すと、上記の内容で進めても複数解が出る場合が結構あります。
商業目的での利用となると、注意しないといけないことはまだまだあるので、それらに関しては機会があれば有料で情報公開したいなと思います。
では最後に、
ひらめき問題は出題者の意図を当てるゲームではない
というお話をします。
発想力が必要なひらめき問題
マッチ棒1本だけ動かして等式にしてください。
≠は使いません。
この問題の出題者が意図する答えは、
2 + 8 = 十 (漢字の10にする)
で、
「このような柔軟なひらめき思考も重要です」と語っているネット記事が散見されます。
しかし、柔軟なひらめき思考以前に、
-2+6=4
という普通の計算問題として解けますし、
数字の表記も指定していなければ、「そのままの向きで考えて」という注意書きもないので、
(逆さに見て)6=8-2
という計算式も正解になってしまいます。
SNS(YouTube含む)で遊びで出題しているならまだしも、
お金をいただいて出題するのであれば、ひらめきや発想力を語る前に、解きチェックはキチンとしていただきたいところです。
記事の運営会社さんにご迷惑をかけないためにも。
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